2021年に公開された映画「トムとジェリー」の感想です。
公開当初からあまり面白そうとは思わなかったのですが、今さらになってアマプラで視聴しました。
最後まで一応見ましたが、やはりひどい点やつまらない点が多かった印象となったので、色々書かせていただきます。
ちなみに、筆者はハンナ・バーベラ期のトムジェリを幼少のころから親しんでいる程度のファンです。
(最も好きな話は邦題「素敵なママ」のダン小路吹き替え版です。)
面白みのないストーリー
本作は、豪華ホテルで開かれる有名セレブカップルの結婚式をトムとジェリーがぶち壊しながらも、結果的に成功させる、というストーリーです。
なんというか、それだけの話でした。
特に感動も笑いもなかったです。
ひねりもなく、大きな見どころもなく「本当にただ実写化してみただけ」の作品に終わった印象です。
トムとジェリーのドタバタシーンは絵にはなりますが、それだけで映画にするのはいかがなものかと。
「ピーターラビット」や「プーさん」などの謎の実写映画ブームがありましたが、本作にシナリオの独自性や変化はなく、元のキャラクターへの依存度が高かったのではないでしょうか。
「自分勝手は良くない」という陳腐なテーマ
一応、本作は「自分本位なキャラクターが反省して改善する」というテーマが描かれています。
主人公からして他人の履歴書を奪って入社したり、セレブ新郎・ベンが新婦の意見をそっちのけにしたり、トムジェリも周囲に迷惑をかけたりと、自分勝手な言動が多いです。
各キャラクターはそれらを反省し、乗り越えた後にご都合ハッピーエンドが待っています。
こういう展開も非常に陳腐であり、わざわざ2時間近くの映画で語る事ではないのです。
それなのに「トムとジェリ―だから陳腐でも良いでしょ?」みたいな免罪符にしているとしか思えないのです。
変に攻めた作風にするよりかはマシかもしれませんが、安定を取るくらいだったら映画化する必要もないのでは。
もっと娯楽性を追及したり、なんならアクション映画寄りでもよかったと思います。
ドタバタ劇が長すぎるし被害が甚大
トムとジェリ―といえば、ドタバタ劇が魅力ではあります。
原作アニメでは様々なシチュエーションで描かれ、パターンも毎回異なっていたため飽きずに楽しむことができました。
アニメではどれだけ派手に破壊しても、基本的に咎めなしであり「コミカルな暴力」を安心して見る事が出来るのです。
しかし、この映画においては「ただひたすらに長くて悲惨なシーン」という印象でしかなかったです。
1回だけならいいのですが、2回、3回と合間合間にドタバタ劇が始まるのです。
それが結構長い上、周囲に迷惑をかけるばかりで被害も大きくなるため、原作のように楽しむ事ができないのです。
しかも、アニメと違って「実物」が破壊されるのとでは見方も変わります。
特にトムのピアノやウェディングケーキが破壊される様は見るも無残であり、悲しい気持ちになってしまいました。
見どころであるはずのドタバタシーンは、アニメのようなコミカルさは大幅に減っているのです。
良かったシーンについて
さて、悪い点も書かせていただきましたが、良いと思った点もいくつかあるのでそちらにも触れていきたいと思います。
説明不要で世界観が理解できる
本作では二次元キャラクターであるトム達が、三次元の現代に溶け込んでいるという世界観です。
二次元キャラが三次元に混在しているというのは、視聴者にとっては違和感があるかと思います。
けれど、映画内ではその違和感に触れることなく「当然のように存在している」のです。
人々はトムとジェリ―の姿を認識し「ただの猫、ネズミ」としてごく普通に扱われています。
「なぜ二次元キャラが現実に!?」みたいな面倒な説明をすることなく、この映画の世界観を表現されている点は良かったと思います。
トムとジェリーは喋らない!
この映画の最も良かった点は「トムとジェリーが喋らない」という事でした。
もし一言でも人間のセリフを喋ろうものなら、この映画は最悪でしたが、それがなかった事は評価される事ではないでしょうか。
アニメ版でも喋るシーンは確かにあるのですが、ごく一部の話だけあり、基本的には叫ぶだけであり、「喋らない」というのが通念でしょう。
本作でも叫び声はアニメ版から流用されていたり、ケンカの場面でもアニメ版で見た事があるシーンが散見されました。
そういう意味では、既存のファンには気を配られていたのではないかと思われます。
トムとジェリー まとめ
総評としては、つまらない面が目立つ上、あまり語る事もない映画でした。
何も考えずに娯楽作品として見ればいいですが、一本道で退屈過ぎるので、もっとストーリーの変化を楽しみたかったです。
久しぶりにトムジェリのアニメを見返していましたが、やはりアニメ版は今見ても非常に面白いです。
この違いは何かといえば、元々が「短編作品」だったことに尽きると思います。
短くても成り立つものを、無理やり引き延ばしたとしても、蛇足となったりまったくの別物になるのは当前でしょう。
わずか10分足らずでもストーリーが簡潔にまとまっている原作の良さを知っているならば、なおさら長編映画としては不向きな作品だったと思います。
というわけで以上です。