最近になって、ついにAmazon primeにて「ジャンクヘッド」が配信されました。
7年という膨大な歳月をかけて、ほぼ1人で完成させたという逸話は、多くの人の知るところでもあるでしょう。(実際は、交代制で何人かのスタッフさんもいらっしゃるそうですが。)
その作業工程の大変さは計り知れませんが、僕のような観客として評価すべきは、やはり「その内容」であります。
僕は映画館での鑑賞は出来ませんでしたが、遅ればせながらようやく見ことが出来ました。
ずっと期待して、やっと視聴できたという感動から、僭越ながら感想をしたためている次第です。
「面白い」とか「つまならい」とか、総評的な感想は後にしまして、まずは、個人的な見どころを紹介していきたいと思います。
ジャンクヘッドの見どころについて
僕がこの作品の大きな見どころだと感じたのは「退廃した未来への想像力が掻き立てられる」のが1つ。
そして、「未知の世界の探検」の2つです。
この2つを中心に、ご紹介していきます。
リアリティのある人類の未来
まず、「人類の生殖機能を失った」という世界が舞台になる今作。
実はこれはあながち「完全なフィクション設定」というわけではありません。
というのも、僕は先日サイエンスゼロという番組にて、「人類が中性化している」という事実を知りました。
例えば、先進国において、男性の持つ「テストステロン(男性ホルモン)」の量が減少し、逆に女性の方が増加しているそうです。
それに伴い、生殖機能異常が起きやすくなったり、性に興味がなくなったりと、本当に「生殖機能の喪失」が起きつつあるというのです。
そういった事を鑑みると、ジャンクヘッドにおける「退廃した未来」には、そんなリアリティがあってゾクリとしました。
また、「新種のウィルス」で人口の3割が減ったという世界設定も、まさに昨今の情勢を表しているかのようです。
7年前からその構想はあっただろうと考えると、「ただのフィクション」で片づけられず、現実味を帯びていくようです。
また、作中における人類は、遺伝子操作によって「ほぼ永遠の命」を手に入れています。
だからといって、それが全く幸せには見えず、ディストピアという表現がしっくりくる感じです。
世間では「長寿がいい」などとか言われていますが、生きがいもなく漠然と生かされるという人生を送る人も、世の中にはいるかもしれません。
そんな風に現実と見比べると、本当に起こり得そうな暗い未来を突きつけられていると感じました。
ちなみに上記の「現実世界」でのシーンは、主人公の回想でさらっと流される程度でした。
にもかかわらず、かなりのインパクトを残し、「地上の生活」がどんなモノなのか、もっと見てみたいという好奇心も掻き立てられるところです。
未知なる地下世界への探索
さて、主人公は不況のあおりを受け、バーチャルダンス講師の仕事をやめて「地下世界への探索」に志願することとなりました。
退廃的な現実世界よりも、大半のパートは「地下世界の探索」と、そこに住む人口生命体「マリガンとの交流(?)」がメインとなっています。
そのマリガンという存在こそが、この作品の最も大きな見どころだと思います。
「マリガン」とは、地底に住む凶暴で知性のないケダモノたちを指します。
その一方で、言葉を理解し、コミュニティを築くことが出来る者も総称して「マリガン」と呼ばれています。
マリガンは、ややグロさを感じるデザインとなっていますが、僕は同時にこの種族に愛嬌を感じるのです。
正直、この映画では、「地下世界やマリガンという存在を楽しめるかどうか」で、好みが分かれると思います。
例えば、独特だけどクセになってしまう謎言語、広大で危険すぎる地下世界の構造、得体の知れないキモすぎる高級食材、古めかしいながらも実用的で味のある工具や機械。
また、屈強な女性や、太鼓持ち、ハンター、詐欺師だったりと、個性豊かすぎる性格のマリガンたち。
そして何をしでかすか予測不能の奇形の危険生物や、後半で明かされるどこか神秘的な生命の循環。
そんな、あらゆる未知のモノばかりが出てくるので、それに対し「見入ってしまう」のか「キモ…」と思うのかで、面白いかどうかの評価は分かれる作品だと思います。
ちなみに、僕は見入ってしまいました。
ジャンクヘッドのストーリーについて
ただし、「で、肝心のストーリーは?」と言われると、僕も「うーん」としか言えません。
僕としても、見終わった直後は「一体この映画は何だったんだ??」と、よくわからない状態になりました。
というか、視聴中は夢中になっていて、ひたすらその世界にのめり込んでいたのです。
しいて言うなら、地底世界を探索したり、そこに住む彼らの生態を覗くことこそが、この映画のストーリーになるのではないでしょうか。
主人公は「目的を遂行するために地底に来た」という、単純な話なので、それを語ったところで仕方がないのです。
それゆえ「感動!涙!のあるストーリー!」ではありませんでした。
それに、この作品は実は3部作構想らしいので、ストーリーを今回で評価することはなかなか難しいというのもあります。
僕が感じたこの作品の最大の魅力は「好奇心をくすぐられる」という点なのです。
とにもかくにも、この世界が気になるのであれば、ご自分の目でぜひ見てみましょう、と言ったところでしょうか。
…というわけで、以上が見どころや、ストーリーの紹介となります。
ジャンクヘッド 総評的なモノ
さて、最後に総評的な事を書いて、終わらせていただきます。
とりあえず、僕としては「人を選ぶ映画」だとは思いました。
もし人に勧めるなら、手放しで褒めるよりも「僕は好きだけど…」みたいな枕詞がいる気がします。
というか、終始グロいシーンも多いため、失礼ながら万人受けする感じではないとは思います。
とはいえ、これほどの人気を博している理由は、監督の計り知れない情熱や、パワーによるものなのでしょう。
僕としては、ストーリー自体は、盛り上がりやら緊迫とか、考えさせられるとか、残念ながらそういうのはあまり感じませんでした。
後半の一部では多少アクションシーンがあり、「おおっ!!」となりましたが、全体的に「探索」と「マリガン」の生態や日常、みたいな部分に重きが置かれていたと思います。
ですので、「映像」や「表現」で魅せる映画として納得できれば、他に類を見ないほど圧倒的なものがあり、僕は面白かったと思います。
実際、作りこみが凄まじく濃いことに異を唱える人は、まずいないでしょう。
また、視聴中は、僕が子供のころに見たスターウォーズのような、本当にありそうな未知の世界を見たような感覚を覚えていたような気がします。
そんな子供のころに持っていた単純な好奇心を呼び起こしてくれるような映画だったと僕は思います。
僕は大人になるにつれ、現実が無味無臭になっていく悲しさはありましたが、こうして面白いものにまた出会えた事には、嬉しいものがありました。
そういう意味では、非常に高い価値を感じさせていただいた、という所存です。
また、久しぶりに没入できた作品でもあり、非常に印象に残る映画でもありました。
視聴後から数日たってもずっと頭の中で考えてしまうほどです。
ですので「人を選ぶ作品」ではありますが、「自分の知らない世界を見たい!」という好奇心を持つの方にはおすすめしたい映画だと思った次第です。
まだ未視聴の方は、一見の価値あり、かもしれません。
そして、ぜひ第2部、第3部と完成を心待ちにさせていただく次第です。
そんなところで、今回はここまでとさせていただきます。