異世界モノが多すぎる理由を考えてみた

異世界転生

今回のテーマは、漫画やアニメにおける「異世界転生モノ」が増え続けている問題です。

 

僕はwebサイトの漫画広告で、何度も何度も「異世界なんちゃら」と表示されまくりの現状があります。

ラノベとかはどうでもいいのですが、わざわざコミカライズした広告を見せ続けられるのは苦痛なのです。

(もしこのブログにも表示されていたら本当にゴメンナサイ)

 

また、アニメも転生系が多く「またかよ」って感じです。

「異世界」という字面を見るだけで切るに至ってます。

 

しかし、ただ嫌悪して文句を言うだけでも仕方がありません。

そこで、今回は視点をズラし「なぜ異世界転生モノが増え続けているのか?」という考察をしていきたいと思います。

(いつも通り主観的な感想が含まれている事も断っておきます。)

 

そもそも本当に異世界モノは多いのか?

まずは、そもそも「異世界モノ」は本当に多いのかのソースを2つ提示します。

 

1つ目に参照になるのはコチラです。⇒異世界召喚・転移・転生ファンタジー小説の歴史

上記のサイトを見る限り、2010年代初頭から一気に増えたとみてとる事が出来ます。

 

2つ目はこちらです⇒流行りの「異世界転生モノ」は一体何作品くらいある?)

2017年度の「小説家になろう」における「異世界」を題材にした小説数は「81,264件」だったらしいです。

それから6年後の2023年1月現在における数は「170,638件」となりました。(僕調べ)

 

つまり、6年間で80,000作品以上増えたことになります。

単純計算で、年間15,000作品も増えている事になります。

 

これはどういう数字なのか。

総務省統計局によると、令和2年の総出版数は「68608冊」との事。

そのうち、小説の含まれるであろう「文学」は12,104点。

参照(総務省統計局ホームページ 書籍の出版点数)

 

なろう系の「異世界モノ」は、日本の文学を上回る勢いだった…!?

 

ちなみに、なろう全体で100万件近くあるうちの17%を「異世界」が占めています。

メジャーなキーワードであろう「SF」は21,502件(約2%)。

異世界も含む「ファンタジー」ですら、98,652作(10%)。

「恋愛」も一歩及ばず114,349件(約11%)という結果でした。

※いずれも2023年1月10日の計測によるもの。

 

よって「異世界ものが多すぎる!」と文句は容認されてもいいのではないでしょうか。

 

なぜ飽和しないのか?

そう考えると、1つの疑問が浮かびます。

多すぎるのにもかかわらず、なぜ未だに書かれ続けるのかという疑問です。

 

それは恐らく、恋愛、スポーツ、バトルのように、「異世界」として1つのジャンルが確立されてしまったからではないでしょうか。

 

例えば、一口に「スポーツ漫画」といっても、それもまた多く出回っています。

バトル漫画も、恋愛漫画も、日常系漫画もそうですね。

 

「手垢がつきまくっている」と言われても、未だに描かれているジャンルはいくらでもあります。

そして、それは「異世界モノ」においても同じことが言えると思われます。

つまり「異世界モノが多すぎる」という指摘は、「スポーツ作品が多すぎる」といっているのとあまり変わらないという事です。

 

すると、世間様からは「スポーツ作品は良いのに、なぜ異世界はダメなんだ?」という反論を受けてしまう事になります。

僕はその反論に対する反論が思い浮かばなかったので、残念ながら「異世界モノ」を認めざるを得なくなりました。

 

よって「異世界モノが多すぎる」という文句を垂れたところで、「そうです」と言われて終了になってしまうというわけです。

 

作りやすい創作の世界

それでは以上を踏まえて、本題に入ります。

なぜSFや恋愛よりも、「異世界モノ」が群を抜いて増え続けているのでしょうか?

それは何といっても、「創作のしやすさ」が挙げられます。

 

なぜ創作がしやすいのかと言えば、テンプレが存在している事が1つの理由です。

 

まず、導入自体がテンプレで成り立っています。

例を挙げると以下の3パターンくらいですかね。

1、元々○○をしていた主人公が突然事故に遭い異世界に転生する。

2、元々○○をしていた主人公が突然異世界に召喚される。

3、元々○○をしていた主人公が突然異世界に転移される。

以上。

 

ストーリーに関しては、主人公が持つ才能や技術であったり、新たに獲得した能力をふんだんに使う感じでしょうか。

あとは無双させたり、ハーレムにさせたり、スローライフを送らせればOKといった所でしょう。

 

これだけ丁寧にテンプレがあれば、年間15,000作品も生まれるのも、納得がいきますね。

 

どこで差別化するのか?

ただ、創作においては「差別化」というのは大事になります。

「全部同じじゃん!」では、そもそも流行るわけがないですからね。

 

では、なろう系作者様たちは、いったい何で差別化をしているのでしょうか。

 

それは主人公のキャラ設定だと思われます。

 

逆に言えば、テンプレの中で唯一差別化が出来る点こそが、「元○○の主人公」の部分くらいしかないのです。

主人公以外のキャラは「ただの引き立て役」になっていればいいので、それらはあまり差別化にはなりません。

(ヒロインや仲間キャラのビジュアルも大事はなるかと思いますが、内容とは関係ないです。)

 

物語が描かれるうえで重要になる「世界観」においては「フワッっとした何となくの中世(ナーロッパ)」ですべて対処可能なので、後は煮るなり焼くなりって感じですかね。

 

そのおかげもあって、オリキャラ以外でも、パロディ的な既存キャラまでもが異世界転生する羽目になりました。

例えば、列海王とか、アミバ様とか、シマコーまでもが異世界転生(転移)しちゃうという、もはやカオス状態なのです。

 

読者=キャラ目当て

ただ、作品がいくら作られたとしても、読者から興味を持たれなければ意味があれません。

恐らく、読者側からしても、理想的な主人公が求められているのではいかと思われます。

感情移入出来たり、何らかの欲求を満たしてくれれば、それで十分なのですから。

それに、無双とかハーレムが目的なら「面倒なストーリーは良いからとにかくスカっとしたい」みたいな層も読まれているかもしれません。

 

となれば、「ストーリーも世界観もほぼ同一」である方が尚更分かりやすくなるため、尖った設定は邪魔になるといえます。

 

作品において「テンプレ」と聞くと悪いイメージが付きますが、実は「内容が分かりやすいし読みやすい」というメリットになりえるのです。

そのためにも、とにかく「主人公」のオリジナリティがあれば、後はキャラクター目当ての読者が勝手についてきてくれる、という構図が想像できるのです。

これで読み手も書き手もWINーWINとなるのです。

 

その需要と供給のバランスが現在のところ高い水準にあるため、異世界モノが大流行しているのだと、僕は考えているのです。

 

読んでないのに文句を言う人間が増える理由

ただし、裏を返せば僕のような「キャラクター以外にも面白さを求めている層」には「異世界モノ」は刺さりません。

 

僕としては、最初のうちは興味がないので「へーそういうジャンルもあるんだね。」という非常に穏やかな気持ちでいました。

しかし、何年にもわたって続くweb広告の「ゴリ押し宣伝」の結果、徐々に僕は嫌悪感を抱くようになったのです。

 

さらに、最近見始めたBS11のアニメも異世界系タイトルが多くなってからは、見る気もどんどん失せるように…。

 

「読んでから批判しろ!」とか「他にも面白いコンテンツはあるでしょ!」という話ではないのです。

それを言うのであれば、テンプレをやめろと言いたいのです。

 

他の量産型の作品はたくさんあれど、導入部分からして様々です。

しかし「異世界モノ」に限っては大体始まり方は一緒。

なので、全く読んだことない層にとっては「ま た 異 世 界 か」としか思えないのです。

 

ただし、読んでもいないのに否定するのは申し訳ないなと思ったので、実際に目を通しても見ました。

 

ところが、やはり自分には合わず、途中で断念しました。

その後も「違う作品なら大丈夫かも…」と思って何度かチャレンジしましたが、やはりダメ。

 

結局「どれも主人公を挿げ替えただけじゃねーか!!」としか思えませんでした。

 

そして、僕の状況はまさにこうなってしまいました↓

いったん、「嫌い」と判断してしまうと、今度は嫌いという偏見で相手を見てしまうので、余計にその相手の悪いところを探してしまって、さらに嫌いになってしまいます。嫌いな点がたくさん見えてきて、「本当に嫌い」になってしまうのです。

https://diamond.jp/articles/-/244853

 

そして「いつまでも同じような異世界漫画ばっかり出てきやがって!!」という嫌悪感が、こうして僕のブログ執筆を駆り立てているというわけです。

 

逆に「異世界モノが好きな層」は、「好きの循環」が生まれているからではないでしょうか。

そして、その循環に衰退が来ない限り、異世界モノは今後も流行していくのでしょう…。

 

キャラクターを愛でる文化

異世界ヒロイン像

ただ「キャラクターさえよければいい」というのは、別に異世界に限った話ではありません。

異世界以外にも、「キャラクターを愛でる文化」はどこにでもあるからです。

最近ではやたらと「推し」という言葉を嫌というほど耳にする経験は、恐らく僕以外にもあると思います。

 

例えば、ソシャゲなんかでも、美麗なキャラクターを前面に出されたCMが多数です。

そのキャラに興味さえ持たせれば、プレイする人が増えるわけで、ストーリーはオマケ程度でもなんとかなります。

 

また、恋愛ゲームもそうですが、支配欲などの様々な欲求を満たせればいいので、「キャラとイチャイチャできればいい」わけです。

 

結局、ストーリー云々ではなく、キャラクターを道具や役割として愛でられていれば、ある程度の満足感は得られるのです。

(僕はそれを「性癖市場」と勝手に命名しています。)

 

つまり、異世界市場においても、そういう現象が起きていると僕は思っているのです。

 

他の例としては「○○さんは○○したい」系漫画も増えたような気がします。

1つの愛されそうな偶像を作り、それを取り巻くキャラや環境を用意するだけで、なんと漫画として成立してしまうのです。

それもまた人気ジャンルとして確立されてしまう事となりました。

 

さらに、萌え系(死語)4コマ漫画も同じような現象が起きていると思っています。

 

ちなみに僕が4コマ作家で好きなのは、「サザエさん」を描く長谷川町子先生や、「コボちゃん」を描く植田まさし先生です。

しかし、彼女達のような究極なまでの日常観察眼を持つ才能は、そうそう現れないのです。

 

それが出来ないからこそ、4コマでは「とにかく可愛いキャラクターが、可愛い事をしていればOK」というキャラ依存展開に移行しがちというわけです。

 

可愛いは正義…なのか?

加えて言えば、サザエさんなんかはkawaiiからかけ離れたあまりにも「シンプル過ぎるキャラクター」です。

それでいて、物語としてちゃんと面白いのは、まさに創作の神髄だと僕は思っています。

 

その理由としては、表面的なキャラクターに頼らず、あくまで「内容の部分」に着目しているからではないでしょうか。

 

一方、内容よりも「可愛ければOK」という層もいるため、いつまでも廃れずにいるのでしょう。

 

もちろん、僕も「キャラクターの魅力」というのは大切になると思います。

だだ「キャラクターだけ」で終わってしまうのか否かで、天と地との差があると思うのです。

 

なろう系における、超絶優れた画期的な発明

あと、もう1つ異世界モノの大きな特徴に触れておきます。

それは「タイトルがやたら長い」というものです。

これは恐らく「多すぎて何を選んでいいか分からない」というユーザーの悩みを解決するためでしょう。

 

例えば映画の「風と共に去りぬ」というタイトルでは、どんな話かピンときませんよね。

その内容を理解するためには、約4時間近く(休憩も挟みながら)、じっくりと向き合って深い感動を得る必要があります。

 

しかし、「作品をじっくり味わう時間がもったいない!」という人は、手に取る事はないでしょう。

 

そんな悩みを解決するためにも、タイトルを説明文化することで「見なくても内容が大体分かってしまう」ようになるのです。

例えば、

「元最強の傭兵の俺が転生したら美少女でした ~スローライフと異世界メシづくり~」

とか

「社畜の俺が平和過ぎる世界に転移したので、ニートに転職して異世界暮らしを満喫します!~ハーレムとダンジョン飯~」

 

こうすれば、時短を求める読者にとっても、得でしかないでしょう。

(ちなみに↑のタイトルは僕が適当に作ったものです。)

 

進化する視聴方法

また、視聴者側もそれに対応するように、チート能力を身に着けつつあるようです。

 

例えば「アニメを倍速で視聴する」とか「ネタバレを先に見てから楽しむ」という方法です。

これならばさらなる時短が出来て、より多くの作品を視聴することが出来ちゃうのです。

 

もちろん、楽しみ方は千差万別なので、素晴らしい事だと思います。

ただし、これが出来るためには2つの条件があります。

 

1つは「好奇心や感動を犠牲にするリスクを恐れない事」

2つは「作品を味わうのではなく、作業的に視聴数を増やすことを目的とする事」

 

倍速視聴やネタバレ先行は、この2つの条件が満たせた選ばれし人間のみが許される高度な視聴方法です。

くれぐれも僕のような老害が手を出してはいけない方法なのです。

 

対処法:細分化していることを逆手に取る事

とまぁ、気づけば長々と書いてしまいました。

何が言いたいのかと言えば、売り手も売り手なら、買い手も買い手だっていう話です。

結局、質を求める方がマイノリティであり、質を重視しない多数派が正義なのです。

 

それゆえに今後も異世界モノは蔓延していくでしょうから、興味のない少数派ユーザーもそれに対処していくしかないのです。

 

具体的な対処法としましては、流行している現状を逆手に取る事です。

例えば、自分が売り手側になるなら、どういう作品が売れているか、という分析に使えます。

売り手の思考になると、作品の良し悪しよりも「売れるかどうかが大事」というのは必然です。

流行を取り入れる事で、自分のビジネスにも応用できれば損はないでしょう。

 

一方、ユーザーとして楽しむのであれば「自分に合いそうな作品が増えていること」を素直に喜ぶことも出来ます。

もちろん、わざわざ興味のないジャンルを手に取る必要はありません。

スポーツ嫌いなのに、わざわざ文句を言いながら野球漫画を読む必要はないのです。

今回は「異世界モノ」をやり玉にあげましたが、同様の事が言えます。

既存のジャンルの中からでも、今日もまた多くの作品が生み出され、溢れ出していくのです。

その中から、より高品質な作品を探し出す、という楽しみ方をした方が建設的と言えます。

 

あくまでも「楽しむ事を一番の目的」にしてこそ、趣味嗜好といえるのではないでしょうか。

 

僕の場合は、そういう愚痴とか鬱憤を「ブログのネタにする」という楽しみ方をしてます。

 

ちなみに、僕が異世界作品関連でもっとも優れていると思ったのは、「ナーロッパ」という言葉の創造にあると思います。

考えた人は本当に天才だと思います。

 

というわけで、今回のお話はおしまいとなります。

何らかのご参考になれば幸いです。