はだしのゲン 強さランキングを検証する

はだしのゲン

さて、今回は不朽の名作、「はだしのゲン」の「強さランキング」の考察をしていきます。

強さランキング」は下記のものを扱います。

殿堂入り:麦

SSS:ピカドン

S:ヒロポンムスビ、朴さん(闇市)、B29、角砂糖、白石勝巳

A:死を覚悟したゲン、ピストル隆太、鬼畜米兵、マイクヒロタ

B:ゲン(青年期)、隆太、友子(姫)、光子

C:ムスビ、昭二さん(ギギギモード)、ゲンの父、ゲンの母(包丁)、やくざ

D:クソ森、ゲン(幼少期)

E:朴さん、昭二さん(平常時)、ドングリ、マイトの竜

ーーーー戦闘要員の壁ーーーー

F:江波の糞ババア、ラッキョウ、勝子

G:友子、ゲンの母、鮫島親子、竹槍

参照URL:https://wikiwiki.jp/boudai/%E3%81%AF%E3%81%A0%E3%81%97%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%B3%E5%BC%B7%E3%81%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0

 

このネットで有名なランキングが、果たして本当に妥当なのかを考察していきます。

 

しかし、その前に、前置きを挟ませていただきます。

少々長くなるかもしれませんが、お付き合いいただけるとありがたいです。

 

原作はコチラ↓

 

はだしのゲンという名作について語る

さて、学校の図書室においてある有名な漫画として語られがちなのが、この「はだしのゲン」。

かくいう僕も、初めて出会ったのは小学校の図書室でした。

絵柄はどこか可愛らしく親しみやすいのに、内容はとてつもなく重いものであり、多くの人にインパクトを与えてきたと思います。

また、その恐怖から、最後まで読み進めた方はあまりいないのではないでしょうか。

僕も小学生の頃は途中で断念してしまったクチです。

 

しかし、ある事がきっかけで、後々になってから全巻読破に至り、今こうして記事を書いています。(まだ累計3回ほどしか読み返してませんが。)

内容としては、「戦争」とはどんなものかという事がまざまざと突きつけられる、心に非常に刺さる漫画です。

何度も何度も辛い目に合うゲンたちが、そのたびに持ち前の明るさで困難に立ち向かっていく姿は、涙と感動を与えてくれる、本当の名作だと思います。

そして、「戦争のむごたらしさ」や「この世のものとは思えない恐怖」というものを後世に伝えるという、非常に大きな役割も担っているはずです。

 

また、ストーリーもテンポよく進むため、普通に漫画としても面白いです。

 

ただ、時々「史実とは違う!」みたいな意見もありますが、この漫画において史実を持ち出すのは無粋であり、無意味だと僕は思います。

実際に原爆の被害に遭った方から見た「1つの真実」がここでは語られているのですから。

しかも、これは戦争そのものを描いたわけではなく、過酷な環境におかれて露わになる「人間の醜さ」や「差別の苦しみ」や「戦争の傷跡」であり、いちいち史実を持ち出す必要があるでしょうか。

ですので、ただの歴史漫画ではなく、「1人の被爆者として見た世界」がありありと描かれているのだと僕は思っています。

 

はだしのゲンを題材にしたユーモアについて

また、この作品がもたらすのは「メッセージ性」だけではありません。

大きな魅力がもう1つ隠されています。

それは、「ユーモア」の部分です。

漫画であるがゆえに、どこかコミカルな演出があったり、ネタ的な要素もところどころ含まれているのです。

もちろん、不謹慎な感じもして「笑っていいのだろうか」みたいなところもあります。

しかし!

僕がこの作品を再び読もうというきっかけになったのは、まさにそういった「ネタ」のおかげでした。

恐らく、皆さんも目にしたことがあるであろう、ネタの筆頭である「コラ画像」や「萌えるコマ集」。

そして、かつて存在した「1995 Gen Production」というサイトでは、ユーモアを全面的に押し出されていました。

しかも、「1995 Gen Production」においては「作者”公認”サイト」として運営されていたのです。

すでにサイトは閉鎖されていますが、こちらのサイト(外部リンク)でその一部を確認することが出来ます。

 

僕もその影響を受けた1人でもあり、もし、ネット上でそうしたネタが蔓延しなければ、僕の中では「昔ちょっとだけ読んだ、ただの怖いマンガ」で終わるところでした。

 

しかし、そのネタのおかげで、ある程度大人になってから「また読んでみようかな」と思ったのでした。

 

ですので、今回あえて漫画本編ではなく「強さランキング」の方に力を入れて解説しようと思ったのは、まさにそんな理由からでした。

さらに、現在では「電子書籍化」もされているので、手に取りやすい環境もあります。

 

そこで今回は僭越ながら「強さランキングの検証」を通して、この漫画の魅力を少しでもお伝えできれば、という所なのです。

(ちなみに、僕は共産党員でも日教組でもありませんので、悪しからず。)

というわけで、少々前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に移行しようと思います。

 

はだしのゲン 強さランキングについて

強さランキングについては、冒頭でも挙げさせていただいた、こちらのサイトを参照にします。

はだしのゲン強さランキング(外部リンク)

 

パターン1と、パターン2があるようですが、今回は「パターン1」を見ていきたいと思います。

パターン1 の強さランキングは、以下の通りです。

  • 殿堂入り:麦
  • SSS:ピカドン
  • S:ヒロポンムスビ、朴さん(闇市)、B29、角砂糖、白石勝巳
  • A:死を覚悟したゲン、ピストル隆太、鬼畜米兵、マイクヒロタ
  • B:ゲン(青年期)、隆太、友子(姫)、光子
  • C:ムスビ、昭二さん(ギギギモード)、ゲンの父、ゲンの母(包丁)、やくざ
  • D:クソ森、ゲン(幼少期)
  • E:朴さん、昭二さん(平常時)、ドングリ、マイトの竜

ーーーー戦闘要員の壁ーーーー

  • F:江波の糞ババア、ラッキョウ、勝子
  • G:友子、ゲンの母、鮫島親子、竹槍

 

検証内容について

今回の検証内容ですが、この強さランキングは「作中の何を根拠にして作られたのか」を考察し、その妥当性を求めるものです。

また、曖昧な定義である「強さ」という概念も明らかにしていくこと目的にしています。

 

というわけで、上から順番に見ていきましょう。

殿堂入り:麦 ~ SSS:ピカドン

まずは麦、ピカドンから見ていきます。

単純な殺傷能力だけ言えば「最強」であるピカドン。

この世の何よりも恐ろしいはずです。

では、なぜ攻撃手段のない麦の方がランキングを上回っているのでしょうか。

それは、評価の対象として「防御力」が加味されている事に他ならないからでしょう。

「踏まれても踏まれても、まっすぐに伸びて実を付ける麦のようになれ」という元の父(大吉 氏)が示す通り、麦は「何度やられても蘇る」のです。

 

つまり、麦はピカドンでも倒す事が出来ないのです。

 

殺すだけしか能がないピカドンでは越えられない、「本当の強さ」がそこにはあるのです。

ですので、この順位は妥当であるという事がうかがえます。

ただし、2位だからとって侮れず、絶対使ってはいけない禁忌としてSSSの称号が付いたピカドン。

原子爆弾とは、人間の手には負えない、あまりにも過ぎた力であることを教えてくれています。

これは本当に素晴らしい位置づけだと思います。

続いて、Sランクを見ていきましょう。

 

S:ヒロポンムスビ、朴さん(闇市)、B29、角砂糖

Sランクですが、ここから少し違和感が生じます。

その中でも、妥当といえるのは、朴さん(闇市)、B29、角砂糖です。

もともと朴さんは心優しい反面、自分に力がないことを嘆く、悲しき朝鮮人でした。

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

それだけみれば、Eランク相当も納得です。

しかし彼は、人種差別、焼け野原という逆境を跳ね除け、強さを身に着けるようになります。

朴さん

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

そして、朴さん(闇市)に転身した彼は、見事に逆転し、作中でもかなりの財を成すという「強さ」を見せてくれました。

実は、朴さんはもっとも「麦」に近づいた人間なのかもしれない、あるいは麦を体現したというところで、Sランク入りを果たしたと言えます。

「B29」も、ピカドンや麦には劣るも、戦闘機という事で、3番目にあたるSランクの順位は妥当でしょう。

また、「角砂糖」も秘めたる力を持っているため、これも妥当です。

一見非力な角砂糖ですが、自動車のガソリンタンクに3つでも入れると、アメのように溶けて焼き付いて、エンジンは滅茶苦茶になるとか。

作中では、ゲンたちがアメリカ軍のジープやトラックに角砂糖を投げ入れ、合計21台をエンコに追いやる事に成功しました。

それだけでなく、「軍艦や飛行機や戦車も、砂糖を入れればダメになるだろう」という発言から、さらなるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

つまり、角砂糖は戦闘機を破壊できる力があるため、B29とも渡り合えるのです。

ですので、朴さん(闇市)、B29、角砂糖の順位は妥当と言えるでしょう。

 

一方、疑問となるのは、ヒロポンムスビ、白石勝巳選手です。

ムスビ

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

「ヒロポンムスビ」は、物語後半における薬物の被害者であり、他人に危害を加える事はほぼありませんでした。

戦闘場面も特になく、ヤクザにメタメタにされてしまって最期を迎えるという、悲しい結末を迎えてしまうのです。

作中でもあまり目立った活躍はないのに、なぜ主人公のゲンたちを差し置いて、Sランクとなったのか?

 

それは彼の「名誉の為」に他ならないと思います。

 

というのも、ムスビは「自分の意思」で薬物に手を出したわけではありませんでした。

街中を歩いていていただけなのに、騙されるという形で薬物中毒へと堕とされてしまうのです。

 

しかも、これはあながち、現実世界でもまったくない話ではありません。

例えば、「タバコ1本」を勧められたことで、ヘビースモーカーへの道へと転落することもあるでしょう。

また、「ドラッグには手を出さない」と思っていても、思わぬ形で巻き込まれる可能性もある、という事を教えてくれる場面でもあります。

 

ですので、決してムスビの死は無駄にしてはいけないのです。

そうした尊さを考えればSランクの称号は彼のものといえるのでしょう。

 

それよりも問題なのは「白石勝巳」選手がランクインしている事です。

なぜ問題なのかと言えば、彼は「はだしのゲン」には登場していないからです。

同じく中沢啓治氏の作品である、「広島カープ誕生物語」に登場しているのですが、なぜこのランキングに入っているのかは謎です。

 

A:死を覚悟したゲン、ピストル隆太、鬼畜米兵、マイクヒロタ

続いてはAランクです。

まずはA:「死を覚悟したゲン」を見ていきましょう。

ゲン

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

「死を覚悟したゲン」というワードは、恐らく黒崎戦の発言が由来かと思われます。

 

「自分の死を覚悟したときは、なんにも恐ろしいもんがあるかいや」

「わしゃ死を覚悟したときは強うなるぞ…」

 

人間の死も腐るほど目の当たりにし、地獄の中を生き抜いてきたゲン。

ピカドンが落とされる前からも、差別やいじめの苦しみを味わってきました。

また、どれだけ打ちのめされても、何度も何度も立ち上がる姿は、読者にも勇気を与えてくれます。

そんな彼ならSランクでも良いようですが、なぜAランクなのでしょうか。

恐らくですが、実ははだしのゲンは、3部の構想もあったようで、今後も続くはずだった作品と言われています。

(中沢氏が目の病気を患われたのが原因らしいため、非常に残念でなりません。)

ですので、今後続いた場合の「成長」の意味も込めてのAランクと見る事も出来ます。

それから何十回も死を覚悟して、たっぷりと度胸を身に着けるようになった彼は、今後も強くなっていく事でしょう。

もし、連載が続けばSランク以上に入っていたかもしれません。

また、Bランクにゲン(青年期)、Dランクにゲン(幼少期)なのは、作中での成長がランクにも反映された結果といえるので、こちらも妥当と言えるでしょう。

 

次は、ピストル隆太ですが、B:隆太(通常時)も併せてみていきます。

 

主人公のゲンに匹敵するほどの活躍を見せてくれたのは、まぎれもなく隆太でしょう。

普段はお茶らけていますが、仲間が傷ついたときは感情を共にしてくれる好漢です。

そして、何より彼の長所は「自己犠牲」の精神です。

大切な人の為なら、自分の命をも懸ける事が出来ます。

特に、ピストルを持った隆太は敵なしで、命がけでヤクザとも渡り合い、5人を倒しています。

隆太

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

Sランク入りでもおかしくない程の強さを見せてくれました。

しかし、さすがにB29を相手にすることはできないので、仕方なしという所でしょうか。

また、隆太(通常時)はかなりの頭脳派で、金儲けを始めとした生き抜くための知恵と圧倒的な行動力を見せてくれます。

とはいえ、ピストルがないとやや弱くなるので、通常時のBランクも妥当です。

 

最後に、鬼畜米兵・マイクヒロタを見ていきます。

作中において、具体的な鬼畜米兵はどれを指すのかは、申し訳ありませんが確認できませんでした。

同列で並ぶマイクヒロタも、ある意味では鬼畜米兵なので、そちらでランクを測りたいと思います。

 

マイクヒロタは情に流される事もなく、残忍な任務を冷徹に行える、まさに軍人です。

流石のゲンたちもまともに戦える相手ではなかったようで、リアルでも強い相手だと思われます。

Sには敵わないけれど、Bよりは強い、というところでAランクは妥当と言えるでしょう。

 

B:ゲン(青年期)、隆太、友子(姫)、光子

ゲン(青年期)、隆太(通常時)については上記。

友子は、生まれて間もない赤子で、残念ながら非常に短い生涯を迎えます。

しかし、戦争で子供を亡くした人たちに大きな希望を与え、まさに「姫」として扱われました。

そんな赤子すらの命も平然と奪ってしまう戦争とは、本当に恐ろしいものです…。

 

光子も、これからの未来を照らす、まさに「光」というべき存在になり得ましたし、ゲンにとって大切な存在でした。

ヤクザ相手にも臆せずに攻撃を与えるなど、美しくありながらも、気が強くて頼もしい女性です。

しかし、彼女もまた、残念ながら短い生涯を終えてしまいます。

その強さももちろんですが、彼女たちの尊い犠牲を忘れてはいけない事も含めると、ランキング上位も納得です。

 

Cランク以降について

さて、Cランク以降ですが、ほとんど妥当といえる結果に落ち着きます。

  • C:ムスビ、昭二さん(ギギギモード)、ゲンの父、ゲンの母(包丁)、やくざ
  • D:クソ森、ゲン(幼少期)
  • E:朴さん、昭二さん(平常時)、ドングリ、マイトの竜

Cランクは一般大人レベル、Dランクは子供レベル、Eランクはそれよりもちょっと弱いというところでしょうか。

詳しく検証するまでもなかったので、割愛することにさせていただきました。(都合の良い言い訳)

 

しかし、特筆するべきはやはり、Eランクの「マイトの竜」でしょうか。

 

彼はふところにダイナマイトを抱えていると恐れられているヤクザです。

にもかかわらず、なぜCランクのヤクザとは別枠の、Eランクとなってしまったのか!?

 

それは、子供相手に油断し、あっさりとやられてしまうシーンしか描かれないからです。

マイトの竜

はだしのゲン/中沢啓治氏より引用

画像だと、結構いい人そうに見えます。

 

はだしのゲンにおけるヤクザは鬼畜が多く、子供たちに多大なる被害を与えていきました。

そんな中でも、子供相手に優しさを見せてくれるマイトの竜は、貴重な人情派だったのかもしれません。

しかし、この後、右下のドングリによって倒されてしまうという…。

残念ではありますが、Eランクも納得の活躍しかありませんでした。

 

ちなみに、作中の表記で言えば、正しくは「マイトの竜造」です。

 

強さランキング 検証のおわりに

以上、雑な検証で大変申し訳ありませんでした。

最後に、僭越ながらあとがきをさせていただきます。

 

このランキングの最も大きな魅力は「一般的な力の強さ」だけでランク付けされていない点です。

「なぜこのキャラはこの順位なのか?」を改めて考える事によって「強さとは何か?」を考察する余地が生まれるのだと思います。

 

また、ランクには記載されていませんが、他にも強いと思われるキャラは何人か存在しています。(倉持勇造とか)

調べた限り、それらを反映させた多数のランキングが存在していますが、今回は最もシンプルで有名なものを選ばせていただきました。

 

もちろん、この検証も誤りがあるやもしれないので、ご納得いかない方は、ぜひ再検証をお願い致します。

また、不朽の名作でもあり今こそ読みたい価値のある作品だと僕は思っています。

 

ですので、この機会にご一読いただければ嬉しく思います。

(というか、それが今回の本当の趣旨なのですが…)

電子書籍版で読めるので、ぜひ。

 

というわけで、今回はここで終わらせていただきます。

お読みいただき、ありがとうございました。