今回は、漫画版「ケーキの切れない非行少年たち」についての内容の紹介と感想を書いていきたいと思います。
原作は宮口
鈴木マサカズ先生といえば「子供を殺してくださいという親たち」という漫画の作画もされています。
その作品では家族と子供、そしてそれを取り巻く社会問題が描かれていました。
今作では、「少年院」を舞台として、そこからまた新たな社会問題が描かれていました。
というわけで、さっそくこの漫画の内容に触れていき、感想を述べていきたいと思います。
少年院の分類
まず冒頭では、少年院は、大きく分けて4種類に分類されている事が書かれています。
分類の仕方は、心身の障害の有無、犯罪傾向により近いかどうか、という点で分けられます。
例えば、障害が少なく 、犯罪傾向が弱いなら、第1種少年院。
犯罪を犯してしまったら、第4種少年院。
という具合です。
また「少年」院だけあって、年齢制限もあり、おおむね12歳~26歳までとなっています。
この漫画の第1話では「第1種」の「支援教育課程」に属する少年院が描かれています。
この第1種少年院では、犯罪傾向は少ないものの、ある程度の知的障害が見れらるか、その疑いがある子供たちが収容されています。
さて、この漫画で最初にスポットが当たるのは、田町雪人(たまち ゆきひと)という少年です。
第1巻では、主にこの雪人くんが少年院に入った経緯や、そこでの過ごし方、そして、少年院を出た後の姿が描かれています。
そもそも、なぜ彼は少年院に入所したのでしょうか?
そして、出所した少年は果たして更生したのでしょうか?
そんな気になるあらすじについて、ご紹介していきたいと思います。
ケーキの切れない非行少年たち あらすじ
幼いころの雪人くんは、父親から日常的に虐待されていました。
その父親は、最終的にはドラッグで逮捕されこととなってしまったのです。
一方、お母さんは精神的に不調をきたし、精神科医からの投薬を受けている生活をしていました。
しかし、病状が良くなることはなかったようで、雪人くんが5年生になるころには、母親からのネグレクトを受けるようにもなりました。
そして、そんな母親から逃れるため、雪人くんとお兄さんは、一時保健所に入所する事になったのです。
少年院に収監された経緯
彼が少年院に入るきっかけとなったのは、その後の話でした。
それは、雪人くんが16歳になった時の事。
彼は児童施設から出た後、知人の紹介で建設業として働く事になったのです。
しかし、その仕事中に紆余曲折があり、無断欠勤や職場での暴力行為に及んでしまったのです。
その結果、彼は少年院に収監された、という経緯でした。
しかし、彼はどこにでもいるような普通の少年の外見をしていました。
表情は暗く固いものでしたが、まだ幼く、体も小さい少年なのです。
しかし、そんな彼には、ある特徴がありました。
それは、刑務所に収監された時、「ケーキを三等分する方法」というテストを受けた時です。
彼はそれが出来ず、歪な縦3本の線を引いたのです。
そうしたテストを受けて、彼は初めて雪人くんに「軽度知的障害」がある事が分ったのです。
そういう障害を持つ人は、質問しても返答がちぐはぐだったり、ちょっとしたお世辞も本気にしてしまう傾向があるのだそうです。
そして、少年院に勤める精神科医の先生(主人公)は、そうした少年が「凶悪犯罪」を行う場合がある事を危惧していました。
少年院での生活
しかし、雪人くんの場合は、少年院に入ってから、大きく成長していきました。
真面目に作業をこなし、仲間とのいざこざも全くありませんでした。
そればかりか、表情も明るくなり、発言もどんどん前向きになっていったのです。
それに、「今まで自分勝手で人に迷惑をかけた」と反省し、他の人の事を考えられるようになったのです。
そして、お母さんとの関係も取り戻したいと思い、「僕の事を待っていてくれる母を二度と裏切らない」と決意したのです。
そこからの彼の成長は目覚ましく、その努力の結果、彼は少年院での模範生となり、出院するときには、立派な「優等生」としてスピーチも行ったのです。
こうして、ここまではお手本になるくらいの更生したかのように見えた雪人くん。
ところが、そんな順調かに見えた彼の生活は、徐々に影を落とし始めるのです…。
社会復帰後に待つ知受けていたのは、厳しい現実でした。
最初の内は、再就職や恋人作りも上手くいっていました。
しかし、一度つまづいたが最後、彼が行きついたのはなんと高額な闇バイトだったのです。
ところが、転落した先は、さらに深い暗黒の中でした。
そして、彼はとてつもない大きな過ちを犯してしまうのです。
この物語の最後には、そんなやりきれない結末が待っていたのです…。
ケーキの切れない非行少年たち 感想と書評
・・・さて、以上が簡単な作品の内容紹介となります。
今回の漫画を読んだとき、その少年の背景に対し、非常に大きな社会的問題があった事が分かりました。
例えば、
両親による虐待(ネグレクト)。
母子家庭による家庭の貧困。
知的障がい者に対する社会の当たりの強さや理解のなさ。
そして、障がい者を犯罪に利用する詐欺グループの存在。
たとえどんな経緯があろうとも、罪を犯せば「犯罪者」となってしまう現実。
けれど、それを生み出してしまった社会に全く問題はないと言えるのでしょうか。
おそらく、そんなことはないと思います。
ただ、たとえ健常者であっても、この社会に生きづらさを持っている人はたくさんいるかと思います。
かく言う僕も、学校も嫌いだし、会社も嫌いでした。
そういう人が、一歩間違えてしまえば、どんなことが起きてしまうのかと考えると、決して他人事のようには思えませんでした。
かといって、僕たちは雪人くんのような人を救えたのかといえば、やはり僕は自分の無力さを実感しました。
しかし、この漫画で描かれている精神科医の先生がいうセリフがその1つの答えとなりました。
それは「我々は我々のできる事を頑張るしかないと思う」というセリフです。
もし、社会をよくしようという気持ちがあるならば、「出来る範囲」の事を頑張っていくことが、僕たちに唯一残された道なのだと、僕も思いました。
とはいえ、僕はこうして文章を書く事しか出来ませんし、それが何の影響を与えるかも分かりませんが、しないよりはマシだと思って頑張りたいと思います。
ですので、この作品からは、問題提起と、少年犯罪のリアルな実態、それでも前に進むしかないという決論で締めくくられていて、読む価値は大いにあると感じる、と感じました。
まだ1巻しか読んでいませんが、続きを読んだり、原作の文庫本も拝読させていただきたいと思います。
というわけで、今回の漫画紹介は以上で終わらせていただきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。