ギリシア神話の最高神「ゼウス」を徹底解説!

ゼウス

漫画やアニメ、ゲームにおいても題材にされることが多い神、「ゼウス」。

ゼウスはギリシア神話において「最高神」と言われています。

 

最高神というのは、神々の中でもトップ、つまり神の上に君臨する、まさに「神の中の神」といえる存在です。

 

では、なぜゼウスは最高神と呼ばれるようになったのでしょうか?

 

そんなゼウスを知るためには、彼の登場する「ギリシア神話」を理解することが必要となります。

 

今回は、そんな「ギリシア神話」をご紹介する中で、「ゼウス」がどうやって誕生して、何をしてきたのかを見ていきたいと思います。

 

ギリシア神話のあらすじ

そもそも、ギリシア神話とは紀元前15世紀ごろから紀元前8世紀ごろまで、口承によって語られていたものです。

それが、文字の発達と共に、叙事詩として残されるようになったのです。

 

中でも、古代ギリシアの詩人「ホメロス」と「ヘシオドス」によって、さまざまな神話が著されるようになりました。

そして、ヘシオドスの書いた書物である「神統記」の中に、ゼウスの誕生の他、さまざまな活躍が描かれているのです。

また、「神統記」は、この世界や神々の始まりを描いた創世の物語でもあり、ギリシア神話の原点と言えるでしょう。

 

ですので、そんな神統記をベースに、神々の誕生、そして「最高神ゼウス」の誕生までの流れを詳しくご紹介していきたいと思います。

 

カオスから神々の誕生

まず、この世界は「カオス」という空間から始まりました。

カオスとは、絶えず風が吹き荒れる、暗黒の淵のような空間とされています。

 

そのカオスから、最初に「ガイア」と呼ばれる女神が誕生しました。

このガイアの誕生をきっかけに、立て続けに神が生まれることとなりました。

 

ガイアの次に生まれたのが、タルタロスという暗黒の地底の神でした。

さらに、愛の神エロス、夜の女神ニュクス、暗闇の神エレボスといった神々が生まれました。

 

ガイアは「大地の女神」であり、男神と交わらなくても、1人で子供を生むことができました。

そしてガイアは、天空を支配する神「ウラノス」や、海の神ポントス(海そのもの)といった、神の子供たちを生みました。

 

最初は何もないカオスだった世界に、ガイアを始めとして多くの神々の誕生によって、地上や天空や海、そして地底のある世界が作られたのです。

 

それから、ガイアは自分の息子であるウラノスと結婚し、夫婦となりました。

(近親婚というのは神話においてはそう珍しいことではありません。)

 

その後、夫婦となったガイアとウラノスは、12人の子供を産みました。

その子供たちは「ティタン(英語読みでタイタン)」と呼ばれるようになります。

 

このティタンの中に「クロノス」という、とりわけ知力や腕力に優れた神様がいました。

クロノスは、後々、姉の「レア」と結婚します。

 

そして、クロノスとレアの間に生まれた子供の1人が「ゼウス」だったのです。

 

ウラノスと子供たち

ちなみに、ガイアの夫であるウラノスと、その子供ティタンたちは、下記の絵画によってこんな風に表現されています。

ウーラノスと踊る星々

『ウラノスと踊る星々』(1834年)

作者:カルル・フリードリッヒ・シンケル

中心にいる、大きな体で威厳ある父として描かれているのがウラノス。

その周囲にいるのがウラノスの子供たちであるティタンです。

そのティタンの中に、ゼウスの両親である「クロノス」や「レア」も描かています。

 

神々の権力争い

ゼウスは6人きょうだいであり、その末っ子として生まれました。

ゼウスの兄は「ハーデス」や「ポセイドン」、姉は「ヘラ」や「ヘスティア」と言い、その名前に聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、ゼウスは最初から最高神として生まれてきたわけではありません。

 

では、なぜ兄や姉たちを差し置いて、ゼウスだけが後に最高神になれたのでしょうか。

 

それは、数世代にわたるいくつかの争いによって、最終的にゼウスの勝利に落ち着いたことで、その地位を確立したからなのです。

 

では、その争いとはどのようなものだったのでしょうか。

次は、それを見ていきましょう。

 

ウラノスとクロノス

ゼウスが生まれる前、最初にこの世界のトップの神だったのが、すべての神々の母であるガイアでした。

その次に、ガイアの息子であり夫の「ウラノス」がトップとして君臨します。

 

ところが、ウラノスはとある事件により、息子であるクロノス(ゼウスの父)によって、その座を奪われてしまうのです。

 

その事件とは、ガイアと、ウラノスによる夫婦喧嘩が原因でした。

 

実は、ウラノスとガイアの間には、ティタンのほかにも、「キュクプロス(サイクロプス)」と「ヘカトンケイル」という巨人の子供が生まれていました。

 

ところが、この巨人たちは、容姿があまりにも禍々しかったため、父ウラノスに忌み嫌われていたのです。

そのためウラノスにより、巨人たちは、地底の暗黒世界・タルタロスに閉じ込められてしまったのです。

 

もちろん、いくら禍々しいからといって、実の息子にそんな仕打ちをするのはあんまりです。

なので母であるガイアはウラノスに激怒し、夫への復讐を企てるのです。

 

そこでティタンの中でも優秀だったクロノスは、その復讐に加担し、ガイアに手渡された鎌を使って、父であるウラノスの男性器を切り取ってしまったのです。

 

そして、その時の事件の様子は、画家のジョルジョ・ヴァザーリによって描かれています。

クロノスに去勢されるウーラノス

『クロノスに去勢されるウーラノス』(1560年)

 

鎌を持っている方がクロノスで、尻もちをついている方がウラノスです。

 

最初に紹介した「ウーラノスと踊る星々」という絵画では、大きく父の威厳たっぷりに描かれていたウラノスが、尻もちをついて、弱々しく描かれています。

 

こうして、ウラノスは男神としてのプライドも、地位もすべてを失う事となってしまいました。

その代わりに、息子であるクロノスが新たな天空の神として君臨することになったのです。

 

こうして権力は、「ガイア→ウラノス→クロノス」の順番で移行していったのです。

 

クロノスとゼウス

しかし、クロノスもずっと最高神だったわけではなく、息子のゼウスにその地位の座を奪われることになります。

 

では、なぜそうなったのかを解説していきます。

 

まず、先ほどゼウスにはポセイドンやハーデスといった、たくさんの兄姉がいた事を説明しました。

しかし、クロノスはその子供たちをほとんど飲み込んでしまったのです。

 

なぜ、そんなことをしたのかと言えば、いずれ子供たちによって、自分のトップの地位が脅かされる事を危惧したためです。

(父ウラノスの去り際に、そう予言されてしまっていたのです。)

 

かつて、ウラノスが自分の子供であるキュプクロスたちを地下に閉じ込めたように、クロノスも同じ過ちを繰り返してしまったのです。

 

しかし、その中でもゼウスだけは何とか生き延び、クロノスの魔の手から逃れてたくましく成長していきました。

 

そして、青年となったゼウスは、祖母ガイアなどの協力を得て、兄姉を救い出すことを決意します。

 

その結果、ゼウスは兄姉たちを全員救い出すことに成功。

しかし、話はそれだけでは終わりませんでした。

 

なんと、ゼウスは、自分や兄姉苦しめた父クロノスへの復讐を企てることにしたのです。

そのために、兄であるハデスやポセイドンに協力を要請しました。

 

そして、ゼウスは、父クロノス含むティタンたちに攻撃をしかけたのです。

 

こうして、神々の戦争が幕を開けたのでした。

そして、この時の戦争は「ティタノマキア(ティーターノマキアー)」と呼ばれるようになりました。

 

我が子を食らうサトゥルヌス

補足として、ここで1枚の衝撃的な絵画を紹介します。

有名なのでご存じの方もいるかもしれません。

それは「我が子を食らうサトゥルヌス」(1819-1823)というタイトルのフランシスコ・デ・ゴヤによる絵画です。

我が子を食らうサトゥルヌス

このタイトルにあるサトゥルヌスとは、クロノスのことです。(ラテン語読みで、クロノスはサトゥルヌス)。

先ほど紹介した、クロノスが自分の子供であるハーデスやポセイドンを食べるシーンです。

 

伝承では「丸飲み」とされているのですが、この絵画では残酷で生々しい描写がなされています。

ちなみに、同タイトルでピーテル・パウル・ルーベンスという巨匠も、同じ題材として1638年-1640年に描かれています。

我が子を食らうサトゥルヌス(ルーベンス版)

ピーテル・パウル・ルーベンス

神話の1コマから、これほどまでの創作が出来るとは、偉大な芸術家のなせる業としか言いようがありません。

 

ゼウスと雷

さて、話をゼウスに戻しましょう。

先ほどの父クロノスVS息子ゼウスによるティタノマキアは、なかなか決着がつかず、10年もの拮抗状態が続きました。

 

しかし、ゼウスには切り札が存在しました。

 

それは先ほどに紹介した「キュクプロス」と「ヘカトンケイル」の存在です。

タルタロスに幽閉されていたその巨人たちを救い、ゼウスは彼らを味方につけることにしたのです。

 

こうして、母ガイアの力も借り、助け出されたキュクプロスたちはゼウスに感謝し、一緒に共闘を誓いました。

 

さらに、キュクプロスは、実は鍛冶の能力に優れていて、特別なアイテムをゼウスたちに授けました。

 

それこそがゼウスの象徴である雷霆(らいてい)という、激しい雷を起こす武器です。

ゼウス=雷というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、この武器を持って、他の神々を圧倒したことに由来されるのです。

 

また、ヘカトンケイルは「100の手」を意味していて、一度に300もの大岩を敵に投げつけてゼウスを助けました。

 

こうして、巨人の力を借りることによって、ようやくゼウスたちは勝利を収めることができました。

 

その後、ゼウスは天界を、ポセイドンは海を、ハデスは冥界(死後の世界)を治めることとなりました。(くじ引きで決まったらしいです。)

 

こうしてゼウスは実力と運によってトップの地位を勝ち取り、晴れて神々の王となったのです。

 

ちなみに、ティタノマキアの様子を描いたのが、コルネルス・ファン・ハールレムによる「打ち負かされるティタン(1588 – 1590)」です。

ティタンの敗北

ここで描かれているのは、戦いに負け、天空から地上に落ちてきたティタンたちの様子です。

 

その顔は悔しそうでもあり、どこか滑稽さをうかがわせるような表情で描かれています。

ちなみに、どこか浮遊感のあるテイストは、マニエリスムという後期ルネサンスにおける様式によるものです。

 

しかし、ゼウスの話はこれで終わらず、まだまだ続きがあります。

ゼウスは、なんと祖母であるガイアとのバトルにも発展するのです。

 

ゼウスVSガイア (ギガントマキア)

ティタノマキアで勝利をおさめ、神々の王となったゼウス。

では、その戦いで負けてしまったティタンたちはどうなったのでしょうか?

 

実は、ゼウスは敗北したティタンたちを、タルタロスに幽閉することにしたのです。

 

そんなティタンたちへのむごい仕打ちに、今度は祖母のガイアが怒りました。

そこでガイアはギガースという巨人を生み出し、ゼウスと戦うことにしたのです。

 

ちなみに、このギガースの複数形は「ギガンテス」といい、ドラクエをプレイした人がある人は非常になじみ深いモンスターだと思います。(もちろん造形は異なりますが。)

 

そして、このギガンテスとゼウスたちの戦いはギガントマキアと呼ばれる大戦となりました。

 

ただし、ギガンテスを倒すには、神の力だけでは不可能であるという問題を抱えていました。

というのも、ギガンテスは「神には殺されない」というチート能力を持っており、「不死身の巨人」だったのです。

 

そこで、ギガンテスを倒すためには「神の力」ではなく「人間の力」が必要となったのです。

 

しかし実は、ゼウスは予言によってその事をあらかじめ知っており、すでにヘラクレスという戦士を味方にしていました。

 

ヘラクレスとは、ゼウスと人間の女性アルクメネの間に生まれた子供でもあり、英雄としても語り継がれています。(ヘラクレスのエピソードも多いため、またの機会に紹介したいと思います。)

 

そして、そのヘラクレスの放つ弓矢によって、ギガンテスにとどめの一撃を与え、このギガントマキアは、ゼウス軍の圧勝に終わったのでした。

 

ゼウスVSテュポーン

しかし、敗北したガイアは、まだ諦めてはいませんでした。

ガイアはなんとあのタルタロスと交じり合うことによって、「テュポン」というギリシア神話上、最も強い怪物を生み出しました。

 

ゼウスが雷ならば、テュポンは炎を吐き、天地を揺るがすほどの壮大な戦いとなっていきます。

 

そして、その戦いで、なんとゼウスはテュポンに敗北を喫してしまうのです。

 

戦いで初めて敗れたゼウスは、両手足の腱を切られて、洞窟に閉じ込められてしまうことになりました。

 

そんな絶望的な状況でしたが、ゼウスのもとに「ヘルメス」という伝令の神が助けに入ります。

 

ヘルメスはゼウスの息子の1人でもあり、泥棒の才能をもった神でもありました。

そして、ヘルメスは隠されていたゼウスの腱を取り戻し、治療にあたりました。

 

そして、完全に復活したゼウスは再びテュポーンと再戦し、見事勝利を収めることになります。

 

こうしてガイアは、もはや敗北を認めるほかはなく、ゼウスは最も強い神、すなわち最高神として誰もが認める神となったのです。

 

 

・・・ちなみにティタンたちはどうなったかというと、ガイアが負けてしまったため、いまだに「地底」に閉じ込められたままとされています。

 

ティタンたちはそのことを恨み続けていて、時々怒り狂って暴れだすことで、「地震が起きる原因」ともされています。

 

ゼウスは好色だった?

というわけで、以上がギリシア神話の始まりから、ゼウス誕生~英雄譚までの流れとなります。

 

また、ゼウスは英雄でもある反面、非常に好色な神としても有名でもあります。

美女はもちろん、美少年にも目がありませんでした。

ですので、ゼウスは複数の妻や愛人を持ち、大勢の子供を産ませていきました。

 

なので、ギリシア神話では、ゼウスの英雄譚以上に、愛人関係やらその子供たちのエピソードなども、たくさん存在しています。

 

先ほどにも挙げた「ヘラクレス」や「ヘルメス」といった神にも、さまざまエピソードがあります。

 

ただし、その中には悲劇的なものも多く、特に「ヘラ」という嫉妬深い妻によって、ゼウスの愛人や子供たちは不幸に見舞われたりしています。

 

しかしながら、それらを書くと、多すぎてキリがなくなってしまうので、今回は割愛させていただきます。

(ご要望等によって、また書かせていただくかもしれません。)

 

ちなみに天界でのゼウスの仕事は「世界が”運命通り”進行するように取り仕切ること」です。

いくらゼウスでも「運命」を決めることはできず、運命を決めるのは、「モイライ」という3人の女神に委ねらているのです。

最高神だからといって、決してすべてが万能であるというわけではないというわけですね。

 

というわけで、ゼウスがどういう神なのか、なぜ「最高神」なのかが少しでもお判りいただけたら幸いでございます。

 

神様が覚えにくい?

さて、最後になりますが、これまで聞きなれない神の名前がたくさん出てきて、混乱されたかもしれません。

 

しかし、最初はカオスの世界だったけれど、ガイアという大地の女神が生まれてから、次々に神が誕生して世界を作っていった、という基本を押さえおくと、ギリシア神話も多少分かりやすくなるかと思います。

 

ガイア→ウラノス(天空の神)→クロノス(ティタンの1人)→ゼウス、という順番で覚えておけば、とりあえず間違いありません。

 

ギリシア神話には多くの神が存在していて、時々混乱しそうになりますが、元をたどればガイアの子孫の物語ということが分かると、そこまで難解ではないかと思われます。(厳密には、ガイアというよりカオスの子孫といえますが)。

 

ちなみに、ガイアやタルタロス、ティタンたちは「原初の神」と総称されることもあります。

これらの原初の神こそが、ギリシア神話の原点であり、途中で分からなくなったらこの原点に戻りましょう。

ギリシア神話とは、いわば壮大な家系図であり、そこから1柱1柱の神にエピソードがある、という感じです。

 

ちなみに日本では神様を数える時の単位は〇人ではなく、「1柱(ひとはしら)、2柱(ふたはしら)、3柱(みはしら)・・・」と数えます。

 

というわけで、以上で今回のゼウスについてのお話はおしまいとなります。

読んでいただき、ありがとうございました。

 

ちなみに、これを機にギリシア神話に興味を持っていただいた方は、下記の本がオススメです。

イラストで読む ギリシア神話の神々

ギリシア神話は分かりにくいのですが、この本では、イラストで分かりやすく説明されているので、非常に読みやすいです。